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■日本神話と神社のブーム

 

2013年は、20年ぶりの伊勢神宮の式年遷宮と60年ぶりの出雲大社の大遷宮が執り行われたとあって話題になりました。

 

2013年、伊勢神宮に参拝された方は1420万人、日本人の10人に1人が参拝に行ったことになります。

 

「これまで参拝者は中高年の男性の団体が多かったが、若い女性や子連れのファミリーの姿などが目立つようになった」「人々の意識が変わり、本物志向になってきたからでしょう」と神社本庁の担当者は話しています。

 

ここ最近の、リーマンショックという世界的な金融危機、東日本大震災、それに続く福島原発事故という未曾有の災禍に見舞われた時代背景も大きいと思います。人々はこれまでの価値観(経済・科学至上主義)に疑問を感じ、人知を超えた目に見えない力への畏敬の念から、古から自分たちの足元にある「日本古来の自然への信仰」に目が向いてきたのではないでしょうか。

 

かたや出雲大社は、804万人で前年の2倍だったそうです。島根県の担当者によると「若い人を中心に神話や縁結びに関心が集まったから」と話しています。

  

伊勢神宮(三重県)のご祭神は天照大御神で、天津神の最高神です。かたや出雲大社(島根県)のご祭神は大国主神で、国津神の最高神です。

 

人々は、ここ最近の日本での出来事を体験することで、これまでの価値観(経済・科学至上主義)に疑問を感じ、本来日本人が持っていた考え方や生き方に目を向け始めました。 

 

私たちは、古来から自然のやさしさへの畏敬の念と、自然の厳しさへの畏怖の念を大切にしてきたのです。そうした価値観が神話や神社や祭りなどにあることを気づき、「日本古来の自然への信仰」に目が向いてきたのではないでしょうか。

 

それと、2013年の年に、日本を代表する神々が、同じ年に遷宮の儀式を執り行われたことは、単なる偶然だったのでしょうか?  

 

■日本神話の魅力とは

 

「パワースポット」や「縁結び」といったキーワードで、近年、神話ゆかりの地や神社が、さまざまなメディアを通して取り上げられるようになりました。「無縁社会」と言われる現代において、人と人との絆や精神的な安らぎが求められているからでしょう。

 

特に、神在月(かみありづき)に八百万(やおよろず)の神々が全国から集まるとされる「出雲大社」などは、全国から多くの参拝客・観光客が訪れていいます。

 

神話とは、世界の起源などを記した固有の民族の古(いにしえ)の物語です。世界の各地域で、どの民族にとっても大切に語り継がれてきたものです。 また、それぞれの民族・地域ごとに豊かな内容をもっており、民族の多様性や人類の共通性などを知ることができる貴重な伝承といえます。

 

一方、私たちの日本では、戦前教育における歴史的経緯もあって、公的な教育機関では教えられず、日本の神話を知らない人々が多数を占めるようになっています。

 

そうしたことがありましたが、近年日本神話の見直しがあり、小学校の教科書に「因幡の素兎」など神話が掲載されることになりました。子どもの頃から日本の神話に親しむことは、私たちの祖先が持っていた生命観や世界観などの日本文化の源流に触れる経験になり、豊かな心を育てることにつながると思います。

 

ここ数年の社会の変化や私たちの価値観の変化が、ようやく日本の神話の魅力に気づかせることになってきたのだと思います。

 

2012年は、古事記が編纂されて1300年の記念の年でした。2013年は、出雲大社と伊勢神宮の同時遷宮の年でした。今、私たちは、もう一度、日本人の精神的源流である日本の神話を知ることは大切なのではないでしょうか。

 

日本神話は何も難しいものではなく、それは、壮大なスケールと躍動するダイナミズムにあふれ、物語として力強い魅力に満ちたものです。

 

また、登場する神々も、とても大らかで喜怒哀楽に富んでおり、現代社会に生きる私たちを惹きつけてやみません。あなたも神話の魅力にふれてみませんか。

 

■日本神話とは

■日本神話とは

日本神話とは、日本の中で発生し、伝承されてきた神話のことです。

 

「古事記」や「日本書紀」、各地に伝わる「風土記」をもとに体系づけられた神話の事を指します。 

 

 

■日本の神とは

 

「八百万(やおよろず)の神」と言う言葉があります。日本の素朴な信仰には様々な神々が登場します。こうした神々の数が非常に多い事からこう言われるようになりました。(八百万の神々がいるということではなく、たくさんの神々を八百万と表現したのです)。

 

日本人は古(いにしえ)より、様々なものに対して神性「カミ」を見出してきました。海、山、川、火、水、雷、植物、動物などの自然物、地震、津波、噴火、嵐、水害、飢饉、疫病などの災害災厄、また過去の実力者有力者(徳川家康=東照大権現など)や恐れを抱く存在(菅原道真=天神)、体制に反逆した存在(平将門)も神として崇め奉っています。

 

庶民の信仰した神としては、土地を守る土地神、氏神があります。また長年使ってきた道具も神になるとされます。さらに日本人は、人は死ぬと家の神となり、子孫達を永遠に守っていくと教えられていました。日本人にとって神とは、常に一人ひとりの隣にいる存在なのです。

 

■古事記とは

 

「古事記」とは、現存する日本最古の歴史書です。

 

内容は日本の神話や歴史などが書かれています。上巻・中巻・下巻より構成され、内容は全文が漢字で書かれています。上巻と中巻の途中までは神話や伝説が中心となり(神代の物語)、それ以後は歴史の記述(人代の物語)が増えていくが明確には区別されていません。また上巻には編纂の経緯などを述べた序文も含まれています。

 

成立は奈良時代の和同5年(712年)で、伝承では稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗誦したものを太安万侶(おおのやすまろ)が文章化したとされています。普通は「こじき」と音読みするが本居宣長は「ふることぶみ」と訓読みする説を唱えました。

 

■「古事記」神代神話の内容

 

「古事記」の上つ巻(神代)は、神武天皇の在位する以前までの時代の神々の物語の事でです。

 

◇天地開闢

世界の最初に高天原で、別天津神・神世七代という神々が誕生。これらの神々の最後に生まれてきたのが伊邪那岐命(いざなぎ)・伊邪那美(いざなみ)です。

 

◇国産みと神産み

イザナキ・イザナミの両神は自らがつくったオノゴロ島に降り、結婚して大八洲と呼ばれる日本列島を形成する島々を次々と産み出していきました。さらに、さまざまな神々を産み出していきました。イザナキは黄泉の国へ向かい、その後、黄泉のケガレを祓うため禊をし、この時もさまざまな神々が生まれました。

 

◇アマテラスとスサノオの誓約・天岩戸隠れ

須佐之男命(すさのを)は根の国へ行途中高天原へと向かいます。天照大御神(あまてらす)はスサノヲが高天原を奪いに来たのかと勘違いし、弓矢を携えてスサノヲを迎えました。スサノヲはアマテラスの疑いを解くために誓約(うけひ)で身の潔白を証明しました。しかし、スサノヲが高天原で乱暴を働いたためアマテラスは天岩戸に隠れます。そこで、神々は計略でアマテラスを天岩戸から出した。スサノヲは下界に追放されました。

 

◇出雲神話

スサノヲは出雲の国に降り、八俣遠呂智(やまたのおろち)を退治し、櫛名田比売(くしなだひめ)と結婚します。スサノヲの子孫である大己貴命(おほあなむち)はスサノヲの娘・スセリヒメと結婚し、少彦名命(すくなひこな)と葦原中国の国づくりを始めました。

 

◇葦原中津国平定(国譲り)

高天原にいた神々は、葦原中国を統治するべきなのはアマテラスの子孫だとしました。そのため、神を出雲に使わし交渉をしました。最終的に大国主が自らの宮殿建設と引き換えに、天津神に国を譲ることを約束します。

 

◇天孫降臨

アマテラスの孫である邇邇藝命(ににぎ)が葦原中国平定を受けて日向に降臨しました。ニニギは木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)と結婚し、コノハナサクヤヒメは夫の疑いを晴らすため火中で御子を出産しました。

 

◇山幸彦と海幸彦

ニニギの子である海幸彦・山幸彦は、山幸彦が海幸彦の釣り針をなくしたため、海神の宮殿に赴き釣り針を返してもらい、兄に釣り針を返し従えました。山幸彦は海神の娘と結婚し鵜草葺不合命(うがやふきあえず)という子をなしました。ウガヤフキアエズの子が神倭伊波礼毘古命(かんやまといわれひこ)、後の神武天皇であるのです。